インドネシアルピアの相場見通し |
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平成9年1月7日
【為替と貿易収支】
インドネシアの為替動向は昨年10月上旬から政府のルピア年間減価率4〜5%台を意識してか、減価率が従来の週1〜2ポイントから3〜4ポイントとペースが早まった。特に年末にかけて毎年見られる現象であり、特に不思議ではないが自国の輸出産業の競争力を助長しようとする政府の思惑が見え隠れする。インドネシアの経常収支赤字額が1996/1997年会計年度の上半期に於いて、昨年同期の37.5億米ドルから45.2億米ドルと20.6%も増加しており、経常収支赤字が増加したのは貿易黒字でサービス分野での赤字を補填できなかったからと言われている。上半期に於ける貿易黒字は21.34億米ドルで、サービス分野の赤字額が66.6億米ドルにも膨張、この結果経常収支赤字額が急増したもの。正確な年間経常収支赤字は未だ発表されていないが、専門家の間では92億米ドルにも上る予想だ。マリイ・ムハマッド大蔵大臣は非石油・ガス産品の輸出を促進し、他方で輸入を抑制する以外手だては無いと主張している。一方で、96年の年間インフレ率は6.4%に収まり、95年の7.85%をはるかに下回る結果となった。
【金利】
金利の方は、インドネシア中央銀行がルピア減価率を政策目標(そうと言えるのか?)である年間3%〜5%を達成しようと度重なるドル買い・ルピア売りの市場介入(外貨準備金としてドルの増加)を約300〜500百万米ドル規模で実施した。又、SBPU、SBIの償還資金として1兆ルピア規模もの資金を週一回のペースで市場に放出したため、市場ではルピア資金の過剰供給感で全体的に弱含んだ。この時期に国営金融機関であるBNIの株式公開と相まって、国庫に??兆ルピアもの株式購入資金が払い込まれたと噂されており(ルピア資金の増加、市場介入用に充てたと予想するものの...)、この資金で金利の高い対外債務の返済に一部充当したと思われる。年末に国営企業の株式公開が実施される所以がここにあるのではなかろうか。政府は11月に政策金利であるSBPU金利を全期間一律0.5%引き下げ、追って国営金融機関(11月下旬)、民間金融機関(12月下旬?)も預金金利を0.5%〜1.0%引き下げた。この結果、スワップ金利(為替先物のポイントを金利に引き直したもの)1、3、6ヶ月物は各々10月中旬の9.10%、9.08%、92%から12月末の7.90%%、7.50%、7.35%迄低下した。1、3、6ヶ月物のJIBOR平均は10月中旬の14.76%、15.53%、16%から12月末の13.45%、14.60%、15.45%迄低下した。これは大量のルピア資金が市場に流入した事により、市場参加者はルピア資金で充分ファンディングが出来たためスワップ金利が弱含んだもの。
【今年の動向(97年)】
新年を迎え、インドネシア中央銀行のドル/ルピア為替フロートダウンが従来通りのペースに戻り、現在は週1〜2ポイントに落ち着いている。預金準備率の比率が4月に3%から5%に引き上げられので、金利への影響は多少懸念されるが、政府がインドネシアの金利を13%〜14%に落ち着かせたい事もあり、引き続き低下基調と予想される。今年は大統領選挙が5月29日に実施されるが、スハルト大統領の?期連続再選は確実視される。但し、今後の健康問題は依然あり、大きな不安材料として市場には残るであろう。為替政策は貿易収支、経常収支赤字額が改善されない限り現状維持で引き続きルピア減価政策は採り続けるであろう。ここの人たちの平均寿命は65歳です(栄養摂取不充分、医療未発達)。スハルトは相当のさんと言う事になりますが、地位もあるのでこれには当てはまらないかも知れません。ここでは書けませんが、栄養は充分に摂取していると思われるし、世界の名医で治療を受けられるので私の在留期間中は生きていると言うのですがね....。どうでしょう?但し、反政府分子による暗殺、天変地異等による死亡は除く。
【半期回顧と中期見通し】(1998年8月末現時点で作成したものです)
1.通貨危機(半期回顧)
(1)要因インドネシアの通貨危機は97年7月半ばからのタイの通貨下落を背景に始まった。7月半ばのドル/ルピアは2、400から始まり、12月末には1米ドル=5、500台迄下落。また、9月以降は投機筋のルピア売りと増大する対外民間債務返済のための地元企業によるパニック的なドル買い・ルピア売りが発生した。ジャカルタ証券取引所上場企業280社の内、外貨建て収入が売り上げの半分以上を占める企業は20社にも満たないとも言われている。通貨下落が大きな「経済危機」を引き起こした要因の一つは、大半の地場企業の国内マーケットへの依存と過大な外貨借入と言えよう。 97年7月から11月迄は経済的な危機が12月以降は一気に政治問題化、政府への信用不安と進んでいった。
(2) 地場企業の返済能力
ドル/ルピアが6、000と言うレベル(98年1月2日)に達した時点で地場企業はドルの返済能力を失い、98年6月の15、000と言うドル/ルピア水準では多くの企業が「債務返済不能」となり、元本はおろか利息支払い不能に陥っている。
(3) インドネシア中央銀行、政府の対応
98年1月27日に政策金利であるSBI金利(中銀短期証券)の引上げを発表した。政策金利変更は97年10月20日以来3ヶ月ぶり(金利引上げは97年8月19日以来、5ヶ月ぶり)。1月以降に200行以上ある商業銀行を20行程度に集約すべく、中銀は民間銀行に半ば強制的に合併を促したが、救済される側の資産内容が予想以上に悪く、合併計画は進展していない。IMFの条件による政府の5月4日の燃料・電気料金とそれに伴う公共交通料金の大幅値上げはインフレ率の更なる上昇を招き、経済危機を加速する結果となってしまった。
2.金利・為替動向(半期回顧)
1月に入ってからは、主に政治的な要因でルピア下落が加速された。1月上旬に発表された新年度予算をIMFは策定基準
が甘いと評価した事、IMFと再合意した経済再建のコンディショナリティーをスハルト大統領が遵守しないであろうと言う市場観測、同大統領の7選出馬発表、研究技術大臣ハビビ氏を副大統領に起用する事がほぼ固まった事等から、1月下旬には1米ドル=17、000ルピア迄大暴落した。2月以降はスハルト大統領が固定相場制(CBS= Currency Board System)の導入に固執、それが「口先介入」となり、3月以降ほぼ2ヶ月間は概ねドル/ルピアは10、000以下のレベルで推移した。5月の燃料・電気等の大幅値上げが引き金となり、物価急騰等を背景に都市部では暴動が発生、略奪・放火が繰り広げら
れ、ルピアは14、000レベル迄下落した。学生によるスハルト大統領辞任運動が急速に高まった事から、5月21日に同大統領辞任発表と共に後任をハビビ副大統領と表明したため、一時17、000迄暴落した。しかし、銀行再建庁(IBRA)による金融機関の救済策、フランクフルトでの合意された権の最長8年間迄延長、IMF等の資金援助が功を泰し、13,000台迄戻した。その後、8月17日の独立記念日に向けての海外勢によるドル買いポジション巻き戻しもあり、11,000台で推移している。
3.今後の見通し
(1) 国内経済IMFは年末迄のインフレ率を80%、GDPをマイナス10%と発表している。中央統計局によれば、貧困者の数はインドネシア総人口2億人のうち、半数近い9、400万人に達する見込み。物価高騰、大量失業により、国民は苦しい生活を強いられている。失業者数も全労働力1億人の30%にも達すると推定されている。L/Cの受け取り拒絶に象徴される信用低下からくる原材料の輸入難は通貨下落による輸出増を妨げ、早急な経済復興は困難であろう。引き続き厳しい国内情勢、華人の海外脱出、資産流出等で国内インフラ整備は遅延し、海外からの本格的な直接投資、長期投資の回復には数年要すると思われる。
(2) 政治
32年間も前スハルト大統領を支えてきたゴルカル政党の分裂を始め、11月に予定されている国民評議会を控え、既に30以上もの新政党が政府に申請登録をしている事もあり、今後乱立する政党を背景に政治的混乱が予想される。又、総選挙後に控えている大統領選を前に政党間の利害関係争いも予想され、暫くは政治的に不安定な状態が続くであろう。
(3) 金利・為替
上記国内情勢から、金融機関の再編・再建は依然難航し、ルピア通貨に対する信任は依然低い。市場取引は薄いものの、対外債務の支払い延長等から当面のドル買い要因は無くなったと言えよう。国際通貨基金からの支援金も毎月実施される事もあり、今後のルピア堅調推移が予想される。また国内インフレの沈静化・ルピア高維持のため、引き続き高金利政策を実施すると予想。年末の資金需要と相まって国内金利は依然高めに推移するであろう。